アングル:欧州MMFが存続の危機、マイナス金利観測などで打撃

[ロンドン 26日 ロイター] -欧州のマネーマーケットファンド(MMF)が、欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利観測や規制強化で、存続の危機に立たされている。

欧州のMMF業界の規模は約8500億ユーロ。伝統的に、格付けの高い短期証券のみで資産を運用しているが、歴史的な低金利で運用益の確保が難しくなっている。

MMFは地方政府や金融機関にとっては安定した資金調達源となっており、業界が揺らげば、資金調達に重大な影響を及ぼしかねない。

MMFは2011年初め時点で1555本あったが、すでに400本近くが閉鎖されている。ここにきてECBが中銀預金金利をマイナスにする可能性を示唆しており、業界内に不安が広がっている。

MMFが運用資金を直接ECBに預金することはないが、金利がマイナスとなれば、運用資産の大半を占める国債社債・銀行社債の利回りが低下する可能性が高い。

MMF大手のアムンディのファンドマネジャー、パトリック・シメオン氏は「(マイナス金利が)とどめになるかもしれない。非政府証券への投資で何とか運用益を出しているが、中銀預金金利がマイナスになれば、運用益は確保できないだろう」と述べた。

ECBのデータによると、MMF業界は今年すでに570億ユーロの資金流出に見舞われている。流出額は運用資産の8%超に相当する。

アナリストの間では、大型MMFが閉鎖されても、別のMMFに資金が移るだけではないかとの見方が多いが、一部では、政府や銀行の安定した資金調達源が消滅する恐れがあるとの懸念も出ている。

バークレイズによると、欧州のMMFは、域内で発行される政府・事業会社の短期証券のうち22%を保有。域内の金融機関が発行する短期証券については、全体の約40%をMMFが保有している。

<ゼロ金利への懸念>

短期金融市場の関係者を対象に実施したロイター調査では、ECBが中銀預金金利をマイナスにすることはないとの見方が多いが、ECBのアスムセン専務理事など一部のECB当局者は、マイナス金利の可能性を排除していない。

マイナス金利観測については懐疑的な見方が多いものの、市場では、金利がマイナスになった場合に利益が出るオプションの取引が急増するなど、マイナス金利に備える動きも出ている。ユーロも先週、マイナス金利観測で一時下落した。

大手MMFもマイナス金利を視野に入れた対応を進めている。複数のMMFは、すでに新規顧客の受け入れを停止もしくは制限。運用益を上げるため、運用資産の対象を拡大したファンドもある。

フィデリティーの「インスティチューショナル・リキディティー・ファンド」の責任者を務めるジョン・ボイル氏は、運用益がマイナスになっても、投資家が管理手数料を払い続けてくれるのであれば、生き残りが可能だとの見方を示した。

<規制面の足かせ>

ただ、MMFを脅かしているのは、マイナス金利だけではない。金融危機を受けて導入された金融規制も、収益を圧迫する要因となっている。

欧州では、金融危機を受けてドイツとルクセンブルクが、MMF業界の安定化に乗り出した経緯があり、その後、MMFの規制が強化されている。

現在計画中の追加規制が提案通りに導入されれば、ファンドに組み入れられた資産を時価評価しない、表面上の資産価値が一定(コンスタント)なコンスタント・ネット・アセット・バリュー(CNAV)というタイプのMMFについては、資産価値の3%に相当する準備金の積み立てが義務付けられる。

ただ、この規制案は現在も最終調整中で、導入は1年半後となる可能性がある。

アムンディのシメオン氏は「EONIA(ユーロ圏無担保翌日物平均金利)が3─4%あれば、深刻な問題は起きないのだろうが、今の水準では非常に厳しい。生き残りは極めて難しい」と述べた。