〔焦点〕依然あいまいなスペイン支援策、ラホイ首相に多くの難題

マドリード 3日 ロイター] 先週行われた欧州連合(EU)首脳会議でスペインの銀行セクター支援や借り入れコスト押し下げに向けた措置について合意したにもかかわらず、ラホイ首相にとって、全面的な国家救済要請に追い込まれる事態を回避するには厳しい道のりが待ち構えている。
 
 ユーロ圏首脳は先週29日、欧州の恒久的な金融安全網となる欧州安定メカニズム(ESM)が、2013年から政府を経由せず直接銀行に資本を注入できるようにすることで合意。また、債務問題を抱える国の資金調達を支援するため、救済基金による国債買い入れに道を開いた。
 
 だが、合意には詳細な規定が定められていないため、リセッション(景気後退)が深刻化し、財政赤字のさらなる拡大や失業問題の悪化に直面する中、ラホイ首相は救済策を最終的にまとめ上げるため、長く困難な交渉を強いられる見通しだ。
 
 投資家や当局者は、スペインは最大1000億ユーロに上る銀行セクター支援策ばかりでなく、国家に対する支援も必要になるだろうが、環境変化に迅速に対応するのは難しいと懸念している。
 
 首脳会議に出席した欧州のある当局者は「スペインは依然としてリスクにさらされている。公的部門や民間を含めた債務は膨大で、資本再編が迅速に行われるかどうかが鍵になる」と警告している。
 
 スペイン政府筋によると、バンキア<BKIA.MC>、カタルーニャ・カイシャ、ノバガリシア、バンコ・デ・バレンシアなどの銀行破綻を食い止めるため、今後2―3週間のうちに少なくとも400億ユーロが必要となる。その資金がどこから提供されるかは、依然はっきりしていない。
 
 スペインは7月9日までに銀行セクター支援策に関する覚書に調印する予定だが、詳細については依然あいまいなままだ。ある関係筋によると、最終合意は20日にずれ込む可能性もある。
 
 しかも、スペイン政府は通常の国債発行計画をこなす必要があり、年末までにあと1000億ユーロ程度の発行が必要だ。
 政府は現在、約400億ユーロのキャッシュを保有しているが、10月最後の10日間に275億ユーロの債務が償還期限を迎える予定で、それが大きなヤマ場となる。
 
  <ラホイ首相は『不器用』>
 
 スペイン政府は国家救済は必要ないと主張し、公的財政や銀行システムに関して不適切なシグナルを送っており、それが市場を混乱させている。
 ラホイ首相は他の欧州首脳からの信頼を失っており、信頼感を取り戻すには時間がかかりそうだ。
 
 欧州の当局者は「ラホイ首相はとても不器用で、『めちゃくちゃだ』と言ってもいい。彼がいつまで抵抗を続け、現在のコストで資金調達を続けられるか見たいものだ」と突き放している。
 
 スペインの10年債利回り<ES10YT=TWEB>は欧州首脳による合意を受けてやや低下し、3日時点では6.36%で推移しているが、持続不可能とされる7%からさほど遠くない水準にとどまっている。
 
 銀行セクター支援のため400億ユーロがつぎ込まれた場合、今年末にはスペインの債務が対国内総生産(GDP)比で84%近い水準に達する見通し。債券利回りの上昇が続けば、さらに債務が拡大する可能性もある。
 
 ラホイ首相は赤字拡大を食い止めるため、付加価値税の引き上げ、エネルギーに関する新税の導入、不動産税優遇措置の撤廃など、新たな増税策を検討している。
 しかし、多くのエコノミストは、それはすでに過去3年で2度目のリセッションに突入しているスペイン経済をさらに悪化させるだけだと懸念している。
 
 スペインの中央政府の赤字は1―5月に対GDP比で3.41%と、年末時点の目標である3.5%に近い水準にある。
 欧州委員会やドイツはスペインに対し、EUのルールに基づく赤字上限である対GDP比3%を達成する期限を2014年まで先延ばしする可能性を示しているが、EUの強い監視下に置かれていることに変わりはない。
 
  <あいまいな合意>
 
 投資家は、ESMがスペインの銀行セクターを支援した場合に、民間債権者が劣後の地位に置かれる規定を適用しないと欧州首脳が決めたことを歓迎。
 また、スペインの銀行再編基金(FROB)経由で融資された資金のコストが2013年にESMに移転される見通しとなり、スペイン政府の債務増大につながらずに済むことも好意的に受け止められた。
 
 だが、欧州当局者は、首脳会議後も解決されずに残っている問題は数多くあると指摘、「建設的なあいまいさ」を残した会合は「痛々しい」結果を招く可能性があると懸念している。
 
 スペインは7月9日までに1000億ユーロに上る銀行支援策の概要について最終合意を目指しているほか、10月までに7行を中心に再度ストレステスト(健全性審査)を実施する方針を表明している。
 そのため、銀行救済に関する最終的な法案が明らかになるのは、今年終盤になる。
 
 EUの計画に公然と異議を唱えている国も、支援の障害となりそうだ。
 フィンランドはESMが市場を通じてソブリン債を買い入れるのを阻止する考えを示しているほか、オランダも債券買い入れに反対する立場を示している。
 ドイツ連邦議会など多くの国の議会も、債券買い入れについてはケースバイケースで承認することになる見込み。その結果、それは柔軟性を欠く対策となる。
 
 スペインが救済基金による国債買い入れを要請する場合、発行市場での買い入れを要請するのか、流通市場で要請するのかも明らかになっていない。それは、それぞれに付される条件次第となる可能性がある。