トヨタもPBR1倍割れ 東証1部、今年最多

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2019/8/13 18:56

東京株式市場でPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る銘柄が増えている。2日に業績予想を下方修正したトヨタ自動車も1倍を割り込むなど、13日時点で東証1部企業の5割強に当たる1152銘柄が1倍割れとなり、今年最多となった。米中の貿易摩擦が背景にあるが、世界を代表する製造業の相次ぐ1倍割れは売られすぎとの見方もある。

PBRは企業の純資産に対して株式の時価総額が何倍まで買われているかを示す。PBRが1倍を下回る企業は、株式市場が企業の時価が解散価値を下回ると評価していることを意味する。

PBRが1倍を下回る銘柄数は18年12月25日(1161)以来の多さとなり、東証1部全体の54%となった。日経平均が年初来高値水準にあった4月末は1004銘柄と47%にとどまっていた。

業種別にみると、電気機器が16増の84銘柄、化学が21増の100銘柄、機械が30増の101銘柄と、世界景気に左右されやすい外需の輸出株での増加が目立った。個別銘柄でみると、トヨタや京セラ、三菱重工業富士フイルムホールディングスのPBRが1倍を割れた。

企業業績見通しの下方修正が相次ぎ、投資家は業績回復から株高へ向かうシナリオが描けず、割安であっても買いを入れられなくなっている。

岡三証券によると、6月28日から8月9日までに会社計画の通期の経常利益予想の上方修正企業数と下方修正企業数の差を、両方の和で割った「リビジョン・インデックス」を算出すると、全業種平均でマイナス48%となった。電気機器はマイナス85%、化学はマイナス78%、機械はマイナス71%と製造業での落ち込みが目立つ。

米中貿易摩擦の激化がきっかけだ。米トランプ大統領は1日にほぼ全ての中国製品に関税を課す「対中制裁第4弾」の発動を表明した。三井住友DSアセットマネジメントの金本直樹株式運用第一部部長は「年内の在庫循環による市況回復に自信を持てなくなった」と話す。アバディーン・スタンダード・インベストメンツの荒川久志インベストメント・マネジャーは「化学の市況のセンチメントが悪化した」と指摘する。

「米連邦準備理事会(FRB)の利下げ基調が続く中で円高の進行も企業業績の重荷となる」と岡三証券の内山大輔シニアストラテジストは指摘する。東証1部の想定為替レートで最も多いのは1ドル=110円だが、足元は105円台で推移している。中間決算での業績のさらなる下方修正が視野に入るとみる。

もともとPBRが1倍割れが多い銀行業種でも低下が目立つ。モルガン・スタンレーMUFG証券は8日、日銀政策の予想を変更し、早ければ9月会合でマイナス金利の深掘りを含む追加緩和に踏み切るとした。銀行株の収益にはさらなる下押し圧力となりそうだ。

13日は日経平均株価が前週末比229円安と反落した。前日に米株式相場が安くなり、香港デモが激しくなる懸念に加えてアルゼンチンの通貨や株価の下落もあって投資家のリスク回避姿勢が一段と強まった。

安定して高い水準の利益を稼ぐ世界的な製造業の株価が「解散価値」を下回る状態は行き過ぎで、市場が弱気に傾き過ぎているとの声もある。相場を振り回す米中対立で年内に一定の合意があれば、PBRの水準も見直されそうだ。